東京・新宿の繁華街で起きた一件の暴力事件が、思いがけず「決闘罪」という古い法律を世に知らしめることになりました。
舞台となったのは、若者らが集まる通称「トー横」。
当事者同士が暴行することを合意した末、1人が命を落としたとして、警視庁は極めて珍しい罪名を適用しました。
本記事では、事件の概要と人物関係を整理したうえで、なぜ決闘罪が適用されたのかをわかりやすく解説します。
事件の概要

警視庁によりますと、浅利風月容疑者(26)は、別の人物と共謀し、
2025年9月23日午前4時ごろ、歌舞伎町1丁目の路上で、
職業不詳の松田直也さん(当時30)と互いに暴行することを合意した上で争った疑いが持たれています。
浅利容疑者は、松田さんを投げ飛ばすなどして頭部や顔面に強い衝撃を与え、
松田さんはその後、多臓器不全により10月12日に死亡しました。
警視庁は、
- 暴行が合意の上で行われていたこと
- 一方的な襲撃ではなく相互の争いだったこと
を重く見て、決闘罪および傷害致死の疑いで逮捕しました。
浅利風月のプロフィール
- 年齢:26歳
- 住所:千葉県八千代市
- 職業:無職(逮捕時)
- 逮捕容疑:決闘罪、傷害致死
- 認否:容疑を認めている
- 供述:「相手が亡くなったことは大変申し訳なく思っている」
浅利風月と被害者との関係は?
浅利容疑者と被害者の松田さんは、
事件当日に初めて会ったとみられ、ほとんど面識はなかったとされています。
浅利容疑者は調べに対し、
「ささいなことがきっかけだった」と供述しており、
金銭トラブルや長期的な因縁などは確認されていません。
警察は、
- その場の口論や挑発
- 周囲の雰囲気に流された可能性
などが重なり、突発的に暴力へ発展したとみています。
決闘が行われた場所はどこ?
事件現場は、歌舞伎町1丁目にある通称「トー横」と呼ばれるエリアです。
トー横は、
- 深夜でも人通りが多い
- 若者や居場所を求める人が集まりやすい
といった特徴があり、近年はトラブルや事件の発生が問題視されています。
今回の事件も、
見知らぬ者同士が偶発的に接触し、
エスカレートしてしまった典型例といえるかもしれません。
決闘罪ニ関スル件とは?
決闘罪は、1889年(明治22年)に制定された
「決闘罪ニ関スル件」という法律で定められています。
当時は、名誉や面子を理由にした私的な争い、
いわゆる“決闘”が社会問題となっており、
それを抑止する目的でこの法律が作られました。
特徴的なのは、
当事者同士が合意していたとしても処罰される
という点です。
決闘と判断される条件は?
法律の条文には、決闘の明確な定義は書かれていません。
しかし、最高裁判例では次のように示されています。
当事者間の合意により、
相互に身体または生命を害すべき暴行をもって争闘する行為
ポイントは次の2点です。
- 互いに暴力を振るうことを合意している
- 一方的ではなく、相互に争っている
これらがそろえば、
素手であっても、路上の殴り合いであっても、
決闘と判断される可能性があります。
決闘罪の刑罰は?
決闘罪では、
2年以上5年以下の拘禁刑が科されると定められています。
さらに、
- 重傷を負わせた場合
- 死亡させた場合
には、
傷害罪や傷害致死罪などが併合され、より重い刑事責任が問われることになります。
なぜ現代では珍しいのか
決闘罪は存在しているものの、
現代ではほとんど適用されてきませんでした。
理由としては、
- 多くの暴力事件が「傷害」「暴行」で処理される
- 決闘にあたる「合意」が立証しにくい
といった点が挙げられます。
そのため、決闘罪が適用される事件は、
全国的にも極めて異例とされています。
なぜ今、決闘罪が適用されたのか
近年の事件では、
- 事前に殴り合うことを認識していた
- 逃げる・拒否するといった様子がなかった
などといった事情から、
「合意のある暴力」と判断され、決闘罪が適用されたと考えられます。
「双方が納得していたから問題ない」という考えは通用せず、
合意があっても暴力は犯罪であることが改めて示された形です。
- なぜ「傷害事件」ではないの?
-
一方的な暴行ではなく、互いに殴り合うことを合意していたためです。
一般的な傷害事件は、加害者が一方的に相手へ暴力を加えるケースを想定しています。
しかし今回の事件では、当事者同士が暴行することを認識・了承した上で争っていたと判断されました。 - 「合意していたら犯罪にならない」のでは?
-
なりません。合意があっても暴力は犯罪です。
日本の法律では、たとえ双方が納得していても、
生命や身体に危害を加える行為は処罰の対象となります。
そのため「合意のある暴力」は、決闘罪として規制されています。 - 決闘罪とはどんな場合に成立するの?
-
互いに暴力を振るうことを合意し、相互に争った場合です。
最高裁の判例では、決闘を
「当事者間の合意により、相互に身体または生命を害すべき暴行をもって争闘する行為」
としています。
今回の事件は、この条件に当てはまると判断されました。
まとめ
- 歌舞伎町トー横で合意の暴行が発生
- 初対面同士の争いで1人が死亡
- 極めて珍しい「決闘罪」が適用
- 合意があっても暴力は許されない
今回の事件は、
「互いに納得していたから問題ない」という考えが通用しないことを、
強く示す結果となりました。
明治時代に作られた法律が、
現代社会においても生きている――
その現実を突きつけた事件といえるでしょう。

本記事は、報道および公表されている情報をもとに事実関係を整理したものであり、特定の人物や関係者を誹謗中傷する目的はありません。
事件の詳細や責任の所在については、今後の捜査や裁判によって明らかになる可能性があります。関係者やその家族への過度な詮索や憶測、誹謗中傷は控えるようお願いします。

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